弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

後遺障害知識編 特異な損害(醜状痕及び嗅覚味覚障害)1


 こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です^^

 本日は、交通事故の後遺障害知識編 特異な損害(醜状痕及び嗅覚味覚障害編)です!

 この特異な損害というのは、よく賠償交渉で争いになります。理由は、幾つかあるのですが、例えば、知的作業を中心とする職業に多く付かれることが多い現代社会において、後遺障害の部位によっては影響が少ないと判断されることがあります(最三小判昭56年12月22日判決参照)。平たく言えば、相手方保険会社より、「その後遺障害があるからって、実際に仕事に影響するの?損害あるの?」ということが発想の根本にあります。
 
 例えば、本日のテーマではないのですが、鎖骨変形の場合(バイク事故などで転倒した場合なんかに多いのですが)には、鎖骨が変形しているからって、デスクワークに影響するの?それによりお給料は減りますか?ということです。普通はデスクワークに影響しないでしょうし、鎖骨の変形、見た目は確かに少し異なっているかもしれませんが、それによりお給料が減少することはないと思われます。(なお、話は脱線しますが、鎖骨についてはややこしいのですが、肩関節の可動性や日常生活動作に重大な影響はないといわれていることから、労働能力喪失の有無及び程度を巡って争われることが多いです。単に変形だけではなく痛みや運動障害を伴っている場合には損害請求はできることが多いです)

 鎖骨変形のお話になってしまい、恐縮ですが、もし鎖骨変形の方も見られているかもしれませんので、簡単にご説明だけしておきます。よくあるのが、本件事故による後遺障害が自賠法施行令別表第二第12級5号に該当するものとされている場合です。すなわち、「鎖骨に著しい変形を残すもの」として別表第2第12級5号に該当するものと判断されている場合です。この場合には、運動障害や疼痛の影響をどこまで主張できるかが鍵を握ります。医証(カルテ)や陳述書、日常生活の状況を詳細にまとめて主張していき、本件事故により変形部位が原因として疼痛が残存しており、それにより相当程度の労働能力喪失がなされていることを立証していくことが必要でしょう。

 話を戻しますと、、、要するに、特異な損害では、その後遺障害により、どれだけの損害が生じたのか、仕事がどれだけの期間、どれだけの喪失率で影響するのかを具体的に被害者の年齢、職業、後遺障害の部位、程度、事故前の稼働状況等の諸般の事情にを綜合して判断されるべきだと考えています。

 では、醜状痕の場合はどう考えるべきでしょうか?

 外貌についての醜状痕規定については、以下の等級があります。

第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの 
第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
第12号14号 外貌に醜状を残すもの 

慰謝料で言えば赤い本(一般的に裁判所基準)で、第7級で1000万円、第9級690万円、第12級で290万円です(このあたりはネット記事でたくさん記載がありますので省略します)

外貌醜状における労働能力喪失の有無及び程度については、被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、醜状痕の存在のために配置を転換させられたり、職業選択の幅が狭められる等の形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定し、逸失利益を認められることがあります。また、労働能力への直接的な影響は認め難いが、対人関係や対外的な活動に消極的になる等の形で、間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合には、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮し、原則として100万~200万円の幅で後遺障害慰謝料を増額する等と説明されることが多いです。

このため、まずはその外貌醜状が職業にどのように影響するのか、それにより影響受ける程度、損害の程度を主張していくことが重要です。例えば、モデル職や芸能人等露出が多い職業は直接的な影響を受けることが多いですが、例えば主婦の場合であっても、今後就職の可能性や職業、職種によっては影響を受けることが多いですよね。男性でもホストとかだけでなく営業職の職員やサービス業の職員も士業もそうでしょうが、職業選択や営業選択の幅が狭められることにあり、労働能力に直接影響があるのではないかといわれています。

また、直接的な影響は認められないですが、対人関係や対外的な活動に消極的になるなどして、影響が出る場合でも慰謝料の算定要素として増額が認められることもあります(「醜状痕を理由とする後遺障害慰謝料額及び醜状痕が残った男性被害者の後遺障害の評価」(平成13年赤い本参照)さらに、労働能力喪失期間については、醜状は器質的障害であるので通常は経年による回復、改善がさほど期待できないことから、労働能力喪失を認める場合には労働能力喪失期間を限定せず、就労可能の終期とされる67歳までとする事案が多いです(顔の傷は治らないことからよくわかるかと思います。。)

このように使える武器はたくさんありますので、被害者側としては使っていきたいものはつかっていければと思います!!


kagaribi-kotsujiko.hatenablog.com



次に嗅覚、味覚障害については、どう考えていくかについては、こちらで一度ご説明させてもらっていることも多いので割愛させて頂ければと思います!!

kagaribi-kotsujiko.hatenablog.com

kagaribi-kotsujiko.hatenablog.com


www.bengo4.com