弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

元々被害者に内在する持病や身体的特徴により損害賠償金額を減額できるのか、という問題について

 こんにちは!かがりび総合法律事務所代表弁護士の野条です!!

 さて、本日のテーマは、元々被害者に内在する持病や身体的特徴により損害賠償金額を減額できるのか、という問題です。

 相手方保険会社と交渉しているときに、このような反論をなされるときがあります。

 ・元々被害者さんが高齢者であって、骨密度が低いのだから、被害者にも交通事故の被害を悪化させる原因があった。
 ・前にも被害者さんは、事故にあっていて、その影響により被害が悪化しているから被害者さんにも影響がある。
 ・被害者さんがptsdなどの精神的な被害が出ているが、それは被害者さんの性格に起因するものであって、被害者さんが責任を負うべきだ。

 まあ、なんと被害者に辛い言葉を投げかけるのでしょうか?という声もあるかもしれませんが、現実的にありえる話でして、以前このブログでも身体的素因として議論させていただきました!!

 
 最高裁は、「被害者に対する加害行為と被害者のり思していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の意様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を暗償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においても被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平の分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである。」と判示して、原審の判断を是認しています。


 また、別の裁判例では、疾患に当たらない身体的特徴について判示し、平均的体格に比して首が長く多少の顎椎の不安定症があるという身体的特徴を有した被害者が事故によって頭部外傷症候群の傷害を負った事案があります。原審では、被害者の首が長いという素因及び心因的要素を断酌して、被害者の損害のうち4割を減額しましたが、最高裁は、上記の平成4年判決を前提に、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、…損害賠償の額を定めるに当たり醤的することはできないと解すべきである。けだし、人の体格ないし体質は、すべての人が均一同質なものということはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合別、その程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として際にその存在が予定されているものというべきだからである。」と述べています。

他にも、最高裁は、平成4年判決を前提に、「(被害者の疾患を問酌することは)加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、疾患が難病であるかどうか、疾患に催患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか、加害行為により被害者が被つた衝撃の強弱、損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多募等の事情によつて左右されるものではない」と判示し、被害者の擢患していた疾患が治療の長期化や後遺障害の程度に大きく寄与していることが明白であるから、事故前に疾患に伴う症状が発現していなかったとしても、損害の全部を賠償させるのが公平を失するときに当たらないとはいえず、損害の額を定めるに当たり上記疾患を期的すべきものではないということはできないとしています。

さて、これらを前提にどのように被害者側として枠組みを構築していければよいでしょうか?
ここで大事なのは、以下のポイントだと思います。
 
1 被害者の性格も、通常想定される範囲を超えるようなものであるときには、過失相殺の対象ではないと主張する。
2 身体的素因について被害者に対する加害行為と被害者の患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、減額されることはあり得る
3 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有し、これが損害の発生に寄与したとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、減額事由とすることはできない

この枠組みが重要であると考えます!また結局は、個別事例の判断によりますが、学説的には、素因の種類、態様・程度、原則として、特異な性格又は特殊ないし病的な素因は、期的できるが、特異なものとまではいえず、その態様、程度が比較的軽微なものは、慎重な判断をすべきである発現の客観的蓋然性の程度、事故に遭わなければ、素因に基づく症状が終生発現しなかった蓋然性が高い場合、加害者に損害の全部を負担させても酷ではないとする考え方もあります。

また、心因的な素因の場合には、個体差の範囲内を超える精神状態心理的反応事故の被害者は、突然の事故により怪我の治療、加害者側との交渉、対応を余儀なくされ、非日常的なストレスを受ける立場に立たされるから、それによりある程度の心理的な影響(心理的反応)が生じることは、特別な事態ではない。通常生じ得る心理的反応についてまで、損害賠償額の減新要素として考慮することはできないとする見解もあり、当職もこれは一つの見解としてありえるものだと思います。このあたりについては、川造唱「素因減額の判断要素と割合について」日本交通法学会編「人身助償補償研究第4巻」(判例タイムズ社、1997年)161頁。23)松居美二「心因的要因の寄与を理由とする素因減額」交通事故時償の再情築157でも記載されています。


身体的素因も心因的な素因についても相手方から主張された際に、個別要素を毅然と反証できるかが、重要になってきます。そこ具体的事情を用いてどこで解決するのか、これを事前に想定していき、よりよい解決方法を導き出すことが被害者側の弁護士の役割だと認識しています!


ご必要でしたら、遠慮無くお問い合わせくださいますようお願いします!


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