弁護士野条健人の交通事故ノート

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【知識編】脊柱変形と後遺障害における労働能力喪失について

こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

本日は、脊柱変形と後遺障害における労働能力喪失についてお話しいたします!


 裁判例の傾向としては、11級の脊柱変形では20%を下回る数値を認定する例が少なくないことがありますが、決してそういうわけでもありません。現実にどの程度影響が出ているかにより違いがあり、ケース・バイ・ケースです。まずは実際の裁判例を見ていきたいと思います!

1 裁判例について

 ①変形障害だけでは直ちに労働能力に影響を及ぼすものではないが重量物を運搬することできず、同じ体勢で座っているだけで強くなる腰痛が残存しており、これは脊柱の変形障害によるもの

 →12級相当別の12級8号と併合して20%としました。

 ②自賠責上の認定では8級を満たす後弯が生じている。不整癒合、可動時・加重時・歩行時などに痛みが生じる、腰を曲げられない、靴下の着脱等には時間がかかり、長時間起立すると足と腰が痛くなり、中腰やしゃがんで作業を行うことはできず,長時間の歩行には杖が必要としたケース

 →労働能力喪失率を56%としました。

 ③37歳男子トラック運転手、第1腰椎前方26mm、後方38mmの圧潰がある。背部の疲労感、両臀部のしびれ、運転や荷物の積み下ろし業務に従事し続けることは困難であった。

 →労働能力喪失率を20%としました。

 ④立ち仕事でかがんで行う動作等もある美容師の仕事には相応の支障があると考えられる。影響の少ないデスクワーク等の仕事に転職する可能性の有無程度等などを勘案した事例。

 →労働能力喪失率を17%としました。


2 弁護士のコメント
 裁判例では、脊椎の骨折という器質的異常により脊椎と支持性と運動性の機能を減少させ、局所等に疼痛を生じさせ得るものであるという点を重視すると、原則として喪失率表の定める喪失率を認めるのが相当としているようにも思えます。基本的には、自賠責制度の等級に従って、労働能力喪失率表に従った喪失率が認められているとされていますが、近時の裁判例においては,影響が軽微である等として否定的な判示をしたものが少なからずある現状です。このため、脊柱の支持機能・保持機能にどの程度の影響を与え,又は与えるおそれがあるかを,医証等により具体的に検討し,主張・立証していく必要があるかとおもいます!