こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。
本日は、後遺障害の知識編として、**「神経症状の裁判例分析と異議申立書の重要性」**についてお話しします。
後遺障害における神経症状は、個々の被害者の方の状況や職業によって、その評価が大きく変わることがあります。過去の裁判例を分析することは、ご自身のケースが裁判でどのように扱われうるかを予測し、交渉を有利に進める上で非常に有効です。
それでは、具体的な裁判例を見ていきましょう!
神経症状の後遺障害認定:裁判例から学ぶ評価のポイント
タクシー運転手の後遺障害(外傷性頸部症候群、左耳鳴り、難聴で14級)の事例分析
この事例は、**岡山地裁平成5年4月23日判決(交民26巻2号521頁)**で認められたものです。
* 被害者: 59歳男性・タクシー運転手
* 症状: 外傷性頸部症候群(むちうち)による左耳鳴り、難聴
* 認定等級: 後遺障害14級
通常、むちうちによる神経症状で後遺障害14級が認定された場合、労働能力喪失期間は長くても5年(この方の場合、64歳まで)、労働能力喪失率は5%とされることが多いです。しかし、この裁判例では、67歳まで14%の労働能力喪失が認められています。これは、一般的な基準よりも重い後遺障害が評価されたことを意味します。
なぜ、一般的な基準より重く評価されたのか?
この事例のポイントは、神経症状に加えて「左耳鳴り」と「難聴」が後遺障害として残存していたこと、そして被害者の「職業」がタクシー運転手であったことです。
むちうちで耳鳴りの症状が生じることは珍しくありませんが、被害者の方が病院で訴えていなかったり、我慢したりするケースも散見されます。しかし、**耳鳴りの症状によっては後遺障害12級が認定されることもあります。**大きな病院での精密検査が必要になりますが、認定された場合の利益が大きいため、耳鳴り症状のあるご依頼者様の場合は、この可能性を積極的に検討すべき重要な問題です。
今回のタクシー運転手のケースを考えてみましょう。日本は右ハンドル車が主流であり、運転席は右側にあります。このため、お客様との会話では左耳から声を聞き取ることが多くなります。もし左耳が難聴になってしまえば、お客様の行き先の聞き取りなどが困難になり、業務に大きく支障をきたすことは容易に想像できます。耳鳴りも同様に、運転中の集中力や快適性に影響を及ぼすでしょう。
このように、労働能力の喪失程度は、後遺障害が残った部位やその程度だけでなく、職業との直接的な関連性、具体的な業務への影響度合い、そして現実的な労働能力の低下の内容・程度なども加味して検討していくことが非常に有益です。
神経症状の後遺障害認定は専門家へ
神経症状の後遺障害認定は、画像に映らない症状が多いため、立証が難しいケースが少なくありません。しかし、今回ご紹介した裁判例のように、個々の状況や職業特性、そして具体的な影響を丁寧に主張することで、一般的な基準を超える評価が得られる可能性があります。
もし、交通事故による神経症状でお悩みの方、特に「むちうちによる耳鳴りや難聴」「職業への影響が懸念される」といった場合は、ぜひ一度、かがりび綜合法律事務所にご相談ください。私たちは、豊富な経験と裁判例の分析に基づき、あなたの症状が正しく評価され、適正な賠償を受けられるよう全力でサポートいたします。