弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

労働能力喪失率ー味覚障害・嗅覚障害の事例ー

 

 こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

 

 本日は、後遺障害における労働能力喪失について、味覚障害・嗅覚障害の事例を前提に検討していきたいと思います!

 

 まず、労働能力喪失率っていうものは、何か!?というところから出発する必要があります。

 

 すでに、本ブログを見られている方は、後遺障害のことをお調べになられている方も多いと思われますので、平たく言えば、被害者が後遺障害が残存した場合において、当該身体機能障害による労働能力喪失の割合をどう認定するか、という問題です。

 

 一般的には、自賠法施行令第二条記載の後遺障害別等級表を用いますが、その等級表に対応するのが、労働者労働基準監督局長通牒(昭和32年7月4日発第551号)による労働能力喪失率認定記載基準を採用とすることが多いですね!

 

 例えば、後遺障害14級であれば労働能力喪失率は5%ですね!

 

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/syogai.html

 

 では、必ず労働能力喪失率表なのか?というと、そうではありません。これよりも高い喪失率で認定する場合もあります。

 

 例えば、最二小判昭48・11・16判例では、右膝関節屈曲障害により、ピアノのペダル操作が困難になり、正座が不可能となったピアノおよび書道の家庭教師の労働能力喪失率を90%と認定した事例もあります。判例では、「被害者の職業や傷害の具体的状況により、同表に基づく労働能力喪失率以上に減収を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できることはいうまでもない」としています。その他にも、競輪選手の後遺障害で14級認定であるにもかかわらず、2割の労働能力喪失率による逸失利益の算定した裁判例もあります(東京高判平成9年1月19日判例)。

 

 このように、労働喪失率の認定表は、あくまで参考資料ということがおわかりだと思います。被害者側としては、被害者の年齢、職業、後遺障害の部位、程度、事故前の稼働能力などの事情を組み入れて、被害者側であれば被害者の有利になるように強く毅然と主張すべきでしょう。

 

 では、味覚・嗅覚障害のときは、どのように検討すべきなのか、何か問題なのかというところです。一般的には、被害者が交通事故により頭部打撲や脳損傷などを負った場合に、嗅覚障害や味覚障害が生ずることになりますが、労働能力喪失率するかどうか、低下するとしてそれが損害賠償としてどこまで補償されるべきなのか、というところです。

 

 これについても、重要なのは、実態に即してどこまで労働能力の喪失が仕事に影響しているのか、場合によっては生活に影響するのかなども重要な観点です。分かりやすいのは、調理師、寿司職人、溶剤を溶かす職人、シェフ、ソムリエ、香水の調合するかた、製薬会社の調合役、花屋など、嗅覚、味覚に影響するかたは、喪失の程度は大きいでしょう。性別、年齢、減収の程度も大事ですが、職業事情にどのように影響するのか、これを詳細に立証する必要があります。判例では、横浜地判昭55年3月27日判例、東京地判昭62年10月29日判例、東京地判平成6年12月27日、大阪地判平成9年8月28日は肯定している判例もあります。

 

 主婦についても同じです。主婦の解決事例はどこかのページで紹介したいと思います。また、各自の後遺障害認定の際の検査方法も大事になりますので、ご紹介させてもらればと思います!本当に後遺障害については被害者のみなさんに知らせていかないことばかりです。重要な情報をお知らせして、被害者のみなさまのお役にたてればと思うばかりです!今後とも宜しくお願いします!!!