弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

裁判例分析 入院介護の必要性及び相当性について

 こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

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 本日は、入院介護の必要性及び相当性についてお話したいと思います!

 まず、交通事故で入院しました!となった際にどのような支出が挙げられるでしょうか?(赤い本の目次を眺めるのが好きな当職はそれなりに思いつきます...)

 入院での支出としては、入院雑費、入院付添費、入院での付添人交通費などがあります。入院雑費については、ここでは省略しますが、赤い本においては、「1日につき1500円」とされており、比較的にこの水準で運用されている実態があるかと思います!

 最近論点として問題となるのが、入院付添費です。近親者による付添を受ける際には、誰も被害者の方が近親者に対価を請求しませんが、近親者の方は仕事を休んでもらっているかもしれませんし、無料で介護や付添させるわけにもいきませんから、裁判所の考え方(昭和46年6月29日裁判例)では、被害者は、近親者の付添看護料相当の損害を受けたものとして、加害者に対して賠償を求めることができるとしています。

 実際に、赤い本では、「医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば職業付添人の部分には実費全額、近親者付添人は1日につき6500円が被害者本人の損害として認められる。」とされています。
 
 では、何か問題なのか?と思われることが多いかもしれませんが、タイトルのように、本当に入院介護の客観的必要性及び相当性はあるのか?ということです。

 すなわち、入院したらよく分かるかと思いますが、お医者さんだっているんだし、看護士さんだっている、それにもかかわらずあえて入院している被害者に身内が介護する必要なんてあるの?っていうことを相手方保険会社が述べてくることがあります。平たく言えば、この論点が、入院介護の必要性及び相当性ということになります。

 一般的に、裁判所の考え方としては、

 ・医師の指示があれば、原則として入院介護の必要性が認められる方向へ

 ・医師の指示がなくても、受傷の部位・程度によって客観的に付添いの必要性が認められる場合には必要性が認められる方向へ

 ・被害者が幼児や児童である場合には、医学的な判断とは別に社会通念上付添いの必要が認められる方向へ

 という枠組みがあるかなと認識しております(私見

 そうすると、問題は結局これらの立証をどうするのか、ということになります。具体的には、医師作成の監護を要する旨の看護証明書や医証(カルテ)、医療照会を行い入院介護を要する書証、または介護を行うだけの実態(例えば、症状が重症であったり、日常生活動作がどのように制限されており、どうして介護を具体的にする必要があるのか)を陳述書や報告書にまとめる等が重要になっていくるかと思います。

 さて、幾つか、裁判例を見ていき分析していきましょう!!^^

1 (東京地判平23.4.26自保ジ1855・102)事案について

 この裁判例では、足を固定具により固定して安静にせざるを得なかったこと、症状固定時においても右足関節の可動域が参考可動域角度の半分以下に制限されており、術後のリハビリテーション期間においても特に右足等について相当不自由があったと認められること、入院期間中被害者の妻が介護を行っていたことから、近親者による入院介護の必要性を認めています。(東京地判平23.4.26自保ジ1855・102)   

2 (名古屋地判平15.12.19交民36・6・1639)事案について

 この裁判例では、左足を固定されベッドからほとんど動けず母親に付き添ってもらい身の回りの世話を受けていたことから、付添の必要性に医師の特段の意見は窺えないが、日額5500円、45日分を認めています。(名古屋地判平15.12.19交民36・6・1639)       


 この裁判例1及び2については、ともに足の固定がなされており安静にしなければならないほどのものです。そうすると、生活の自立に向けては極めて大変な状況が待っています。移動する制限がありますから、入浴、トイレ、着衣などの制限もあります。2の事例では付添介護の必要性は医師の意見はないですが認められていますベッドからほとんど動けない状況であったことから裁判官も身の回りの世話は少なくとも誰かがしなければならないと認定しているのだと思います。上肢・下肢の骨折などで身体の自由がきかない状態の場合には、付添看護を認める裁判例が多い印象を受けます。。単に身体介護の必要性がある場合のみならず、退院後のリハビリ移行を円滑にする目的、精神機能に与える効果、などを理由に付添費用を肯定する例もあり、このような場合でも医証や実態に即して証拠を残しておくことが重要です。

 
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