弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

後遺障害知識編 頸部及び腰部の神経症状 裁判例分析2

 こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です^^

 さて、本日は、頸部及び腰部の神経症状の裁判例分析について検討していきたいと思います!

 
 これまで、頸部及び腰部の神経症状について、解決事例を見ながら色々とご紹介させて頂きました!

 
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こちらは、むちうち傷害で後遺障害の認定において記載させていただいています!

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前回の裁判例分析については、こちらは以前の裁判例分析となります!

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さて、以下で述べてきます!!




○固定時28歳・男・会社員(成型工)の後遺障害(頸部捻挫による右小指、環指から前腕尺側の知覚鈍麻、第四、第五腰椎間の椎間板ヘルニアの増悪による右仙腸関節部の痛み、右上臀部の痛み、12級12号)について、労働能力喪失率は14%、就労可能年数39年として、ホフマン方式で逸失利益を算定した例(大阪地判平12.3.15 交民33巻2号541頁)。

 この裁判例では、頸部捻挫による右小指、環指から前腕尺側の知覚鈍麻、第四、第五腰椎間の椎間板ヘルニアの増悪による右仙腸関節部の痛み、右上臀部の痛みと複合的かつそれぞれの機能障害が身体に及んでいます。実際に就労可能年数39年の相当の障害があるということですから、単なる神経障害というより機能障害が残存していると言わざるを得ないと判断したものと評価されるでしょう。

 ところで、この裁判例では、ホフマン方式が採用されています。

 これについても簡単ながらご説明しておきますね。
 
 これまで多くの交通事故案件を説明してきましたが、後遺障害の逸失利益や将来介護費用については、本来、被害者が将来得られるであろう収入を先に一時金という形式で取得することになります。このため、平たく言えば、死亡時点や症状固定時点での金額に引き直すことになります。この引き直すものを中間利息控除といいますが、この計算方式をどうするのかについて、以下の考え方があります。


 単利計算によって中間利息を差し引く方法をホフマン方式
 ホフマン方式のうち、被害者側に不利な算出にならないように、1年ごとに利息を差し引くものとしたのを新ホフマン方式といいます。
 
 ところが、現在はライプニッツ方式を使うことが主流になっています。

 ライプニッツ係数とは、交通事故などの人身障害事件における損害賠償のなかで、長期に発生する介護費用や就労機会喪失や減少による逸失利益など、時間と関係する賠償金を一時金に換算する方法である。法定利率で定められた固定5%を用いた期末払いの複利年金現価です。

 次の裁判例を見ていきます。

○年齢不詳・女・主婦兼看護助手の後遺障害(併合12級:中等度のPTSD=12級、頸椎捻挫後の頸部痛=14級、両上肢痛しびれ=14級、腰椎捻挫後の腰痛、両下肢痛=14級)について、10年間14%の労働能力喪失を認めた例(東京地判平17.11.30 交民38巻6号168頁)[素因減額なし]


○52歳・女・主婦(有職)の後遺障害(不眠、回避、フラッシュバック等の精神症状、14級9号、但し、自賠責認定は非該当-事故日平18.7.25)
につき、後遺障害の程度に照らし症状固定時から67歳までの14年間にわたり。5%の労働能力喪失を認めた例(京都地判平21.10.22 交民42巻5号1337頁)。[素因減額なし]

上記の裁判例2つありますが、どちらも主婦です。これまで主婦の事例については、主婦については、これまで主婦に関する後遺障害事例も見てきたと思います。主婦(主夫)としての具体的職務の制限、その制限の内容及び程度、事故後の後遺障害の程度それによる労働能力が具体的に低下しているか、その立証などについて、お話してきましたね。



前者の裁判例は、併合12級のPTSDが認定されています。PTSDは非器質的なもので、なかなか容易に後遺障害が認められないケースもあります。このあたりについてもどこかで説明してきたいですが、後者の事例は、本来自賠責認定されていませんが、裁判で14級9号に認定されています。
不眠、回避、フラッシュバック等の精神症状の具体的立証とともに、これはPTSDが認定されていなくても事故による後遺症がとして認定されていることが大きいものだと思います。以下の例でもそれなり相当程度の労働能力喪失期間が認められていますが、非器質的な損害が認められていることもある
でしょう。

○27歳・固定時31歳・女・看護師の後遺障害(併合:8級:せき柱変形=11級7号、PTSD=9級10号)につき、乗用車助手席に同乗中、中央線を突破した飲酒乗用車に衝突されPTSDに罹患したと認定したうえ、非器質的精神障害については今後症状が改善することが期待されることから、症状固定後12年間は後遺障害等級8級に相当し、その後67歳までは11級に相当するものとして、それぞれ労働能力を45%、20%、喪失したものとした例(さいたま地判平22.9.24 自保ジャーナル1841号27頁)。[素因減額なし]
○固定時9歳・男・小学生の後遺障害(急性ストレス障害後の頭痛等、14級)につき、18歳から67歳まで5%の労働能力喪失を認めた例(東京地判平23.3.3 判時2119号58頁)。
非器質的な損害についても、どこかでご紹介していきたいと思います!被害者の皆さまに少しでもお役に立てる情報を発信してきたいとおもいますので、何卒宜しくおねがいします!

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