弁護士野条健人の交通事故ノート

交通事故の被害者に役立つ情報を発信していきます!!

交通事故の付き添い費用と立証

 こんにちは!

 かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。本日は、交通事故の付添費用とその立証問題です。
 なかなか交通事故が起きたときにしかこの付添費用は考えないのですが、それでも実務では重要なカギを握ることが多いです。
 それに加えて、さまざまな論点があり、複雑ですので、以下で解説していきたいと思います!

第2 付添いの事実
実際に付き添いと評価できる行為をしたことが必要。
× 単なる見舞い
× 医師の説明を受けて手続きをしただけ
△ 被害者が面会謝絶の期間や集中治療室に在室している場合の待機


第3 入院付添費の金額

1 考え方
実際に被害者が近親者付添人に対して費用を支払うことは稀だが,「両者の身分関係上その出捐を免れていることが多いだけ」の理論で近親者の提供した付添看護の労働を金銭的に評価した金額の債務を近親者に対して負っている=損害とみなしている。

2 日額
・ある程度定式化されている。
6500円(赤本)
5500~7000円(青本
6300円(黄色本),
6000円(大阪地裁における交通損害賠償の算定基準)。
・ただし,被害者の状態が極めて重篤な場合や,被害者が年少である場合など,長時間の付き添いや負担の思い濃密な介護が必要となった場合には,8000~8500円が認定されている場合もある。
一方で,付添時間が短い場合や,肉親の情誼の意味が強く特段医療上介護上の行為をしていない事案で入院付添費を認める場合,付き添いの実態が乏しい事案で入院付添費を認める場合などは1000~2000円とされることが多い。

3 期間(日数)
・入院の全期間ではなく,実際に付き添った日数のみ。証拠上,付き添った日を認定するのではなく,「土日のみ」「○日に1回」など,概括的な認定がされる。
・入院期間が長期にわたり,その間病状が徐々に回復し,付添看護の必要性も減少しているものについては,急性期のみ入院付添費を認めるもの,金額を逓減させるもの,全期間を通じて平均して基準額よりも低い金額としたりする裁判例有り。

4 人数
・1人しか認められない場合が多い ∵付き添いの必要性
・2人以上が付き添う必要性があると認められる場合には,複数名の付添看護費を認めた裁判例もある。
・危篤状態での駆けつけの場合には,複数人または基準より高額の入院付添費を認めているものもある。
鹿児島地裁鹿屋支部平成21年1月29日
事故当時12歳,びまん性軸索損傷他の傷害の事案について,複数の近親者によって交代で24時間看護が必要であったと認定され,母親日額8500円,その他の親族日額5000円を認定。
名古屋地裁平成26年4月22日
事故当時62歳の男性,外傷性くも膜下出血,事故直後から強い興奮状態・見当識傷害,暴力的な行動ありの事案について,2人がかりないし交代での付き添いが必要であったと認定され,日額8000円を認定。

5 付添交通費,付添宿泊費
・相当な範囲で損害として認められる。ただし,付き添いにおいて当然発生するものとして,日額の基準額に含まれているとして別途計上しないとする裁判例もある。
・遠方に住む両親が飛行機を利用して駆けつけたり,宿泊を要した場合など,著しく高額な費用を支出した場合は?
最高裁昭和49年4月25日 
母の危篤状態のためにウィーン留学中の娘が飛んで帰った事案について,飛行機代は「通常生ずべき損害」に該当すると認定。

6 近親者の休業損害
・付添をした近親者の休業損害は,関節損害であり,直ちに被害者の損害として認定できるものではない。なので,休損相当額を基礎として日額を算定することはほとんどない。
・その近親者が休業して付き添う必要性が認められるのであれば,その者の休業損害相当額を基礎として入院付添費を算定することが可能だが,そのような必要性が認められるのかは疑問。裁判例の中には,近親者の休業損害を考慮して,入院付添費を認めたものもある。
・職業付添人の費用を超える休業損害相当額の付添費用は認められない。

7 まとめ
入院付添費の認定は,裁判例によってばらつきがある(裁判官の裁量にゆだねられる部分が大きい)。主張立証頑張るしかない・・・
受傷の部位,程度,被害者の年齢等の事情から,
① 医療上・介護上,付添の必要性があること(具体的に何をしたのか)
② 肉親の情誼として付き添うことが社会通念上相当であること
+実際に付き添ったこと

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交通事故により昇給がなくなったこと

 

こんにちは!

 

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

 

本日は、交通事故により昇給がなくなったこと、昇級遅延の影響による減収をどのように考えるか、についてです。

 

一般的に、交通事故による影響があるのか、断定しにくいので、昇級遅延の影響による減収をいつまでの期間にするのか、そもそも認定されるべきかが問題となる。

 

事故による受傷が原因で解雇されあるいは退職を余儀なくされた場合には、無職状態とるものなった以降も、現実に稼働困難な期間が休業期間とされて計算されるものとなります。

 

また、稼働可能となっていても就職先が得られなかった場合には、現実に就労先を得られたときまでの期間か転職先を得るための相当期間のいずれか短期の期間につき損害算定をする。

 

ただ、立証のハードルがありますので、慰謝料の算定要素として組み込んで示談することもままあります。

【事故後に被害者が減収はあまりないが後遺障害逸失利益が認められたケース】

【事故後に被害者が減収はあまりないが後遺障害逸失利益が認められたケース】

 こんにちは!かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。

 本日は、事故後に被害者が減収はあまりないが後遺障害逸失利益が認められた事例についてお話いたします。

 後遺障害の逸失利益・慰謝料は、弁護士さんを入れることにより、大きく変わってくる場合がありますので、以下でも事例を挙げておきます。

 
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第1 はじめに
   Xさんは追突事故に遭い、頚椎損傷等の傷害を負い、後遺障害12級13号に認定されました。Xさんは配達業の従業員でしたが、交通事故により減収はありませんでした。このため、相手方保険会社は事故後の後遺障害逸失利益は殆ど認定していませんでしたが、当職が交渉を行い、後遺障害逸失利益が事故前の収入どおりで計算され、交渉前より遥かに高い総額1100万円で示談しました。

第2 交渉の経緯
   まず、Xさんの事情を詳細に聞き取りしました。確かに減収はありませんが、以前の仕事に比べて内勤が多くなっていること事故により仕事量が減少し職場の上司より昇給が難しくなっていること、配達業での力作業が出来なくなり転職が考えざるを得ないこと等が分かりました。これら聞き取り内容を分析して主張を行ったり、職場の上司に聞いてもらったりした内容を証拠として提出したりしました。粘り強い交渉の結果、Xさんの満足が高い結果で解決できました。


第3 弁護士のコメント
   実際の減収がない若しくは低下している金額が少ない場合にはよく争いになります(別でコラムとして述べる機会があればその際に詳述いたします)。
   一つの考え方として、賠償の対象となる損害を交通事故がなかったなら被害者が得られていたであろう収入と事故後に現実に得られる収入との差額であるとみる考え方です。この考え方に立つと事故後に被害  者の減収がない場合には、後遺障害逸失利益は認められないことになります。
   しかしながら、実際には後遺障害が残存している場合には労働能力の低下や仕事の能率も低下したり、今後被害者が昇給できなくなったり不利益を受けたりすることもあります。また、被害者自身がストレッチや病院に通っている努力があるからこそ、減収していないという評価も成り立つことがあります。
   このため、一概に減収していないからといって後遺障害による逸失利益が認められないという発想に立つのではなく、後遺障害による労働能力が低下し、その低下が被害者の損害にどのように寄与しているのか等も考慮して主張していくべきであると考えています。
   少しでも関連することでご相談のある方は一度ご連絡頂きますようお願いします。

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交通事故での代車費用について

こんにちは!

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です?

 

本日は、交通事故での代車費用について、お話いたします!

 

交通事故に遭った際に、自動車を修理したり、買い換えるまでの間、持っていた自動車が使えなくなりますので、その間、代車を使う必要があります。

 

交通事故においては、被害者に代車を使用する必要性・相当性が認められることが代車費用が損害として認められるための要件となります。

 

まず、大前提として、 代車使用の事実が必要です。

すなわち、実際に被害者が代車を使用していることが必要になります。この点で問題となることはあまり無いと思います。

 

次に、代車使用の必要性・相当性が問題となります。ここで、代車使用の必要性はある程度みなさんもご理解いただからと思います。代車ないと不都合なのは明らかだからです。

ここで、最大の争点は相当性、いつまで代車を使えるのか、どのクラスの代車を借りれるのか、という点になります。

事故車両が高級外車であっても、代車費用額は基本的に国産高級車を借りる場合に要する費用額の範囲内とされています。国産高級車の場合らその車種の通常のグレードの車両を借りるのに必要な費用の限度で損害として認められることになります。

 

ただ、これも保険会社と修理工場やディーラーの配慮でどこまで代車の空きがあるかとかも影響されることになります
 
代車使用期間については、修理の場合には事故車両の修理に必要・相当な期間とされます。
全損の場合ら買い換えることになります。事故車両と同種・同程度の中古車の買い替えに必要・相当な期間に限られますが通常約2週間~1か月とすることが多く、買い替え期間として特段の事情がない限り30日間を超えることはないとした裁判例もあったりします。ここも保険会社との交渉次第では長くなりますが、保険会社と連携して連絡を密にしておかないとあわててもめることがあります。

 

 

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交通事故とヘルニア 第二弾

 こんにちは!

 かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!
 本日は、交通事故とヘルニアについてお話いたします!
 前回も交通事故とヘルニアについてお話させていただきましたが、この問題についてお悩みの方は多いのが現状です!

 ただ、しっかり対策している事案では、後遺障害14級9号があります。例えば、裁判例には当初は打撲程度の軽微事故であったが、頭痛・吐気,左手第3ないし第5指にしびれ感を訴えるようになること、MRIでC4/C5,C5/C6にヘルニア所見があること、事故前に肉体労働に従事するのに支障はなかった
こと、ヘルニアが存在しても,神経学的異常所見等の多角的所見に乏しい自覚症状中心であることから、後遺障害14級9号が認定されている事例や、半年後に後頚部痛発症,頚部の回旋困難となったこと、C6/7のヘルニア所見があること、繊維輪断裂によりヘルニア発症し日常生活でも発症の可能性あること、事故直後から,右肘,左肘及び左上腕部の疼痛を訴え,針治療等を継続していたことから、知覚異常の訴え14級
を認定した事例があります。

さらに、12級の事例では事故直後から頚部の痛み,骨盤,腰の痛み,力が入らないこと、SLRテスト,L5神経根ブロックが奏功→L4/5の膨隆によりL5神経根を圧迫されていること、医師の意見(髄核の信号強度がほぼ正常,椎間板の弾性が保たれている,椎間板の厚み=加齢性とは考えにくい)ことから、後遺障害12級が認定されている事案もあります。

このようにヘルニアといっても程度があり、直ちにヘルニアだからあきらめるという対応はせずに、きちんとした補償をもらうためにも、ぜひかがりび綜合法律事務所にご相談ください!

交通事故とヘルニア 

 

 

 

こんにちは!

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。

本日は、交通事故とヘルニアについて思うところを記載していきます。

 

まず、因果関係の問題と他覚的所見の関係ですが、
ヘルニア所見等の外傷性が否定されても,事故前には症状がなかったことなどから因果関係ありといえる場合があります。

 

他覚所見はあるので証明可能で12級といえるのかが問題となります。この点、自賠責では所見はあるものの経年性であり、他覚的に証明できてはいないとして14級といわれることが多い印象です。経年性であるかはなかなか見分けることができないことがありますね。

 

次に、神経根圧迫の外傷性と経年性の違いはどう判断されるのかというご質問も受けます。

 

たしかに、圧迫の原因が椎間板の膨隆、膨隆どころか髄核突出(繊維輪断裂)であるのか、骨棘形成なのかなどポイントはあります。それも大切なのですか、ヘルニア初期症状がどうだったのか、MRIの画像を検査も重要です。

 


さらに因果関係と素因減額の関係も昨今問われています。これは、事故と症状との因果関係と所見の寄与度は別問題であるのか、既往のヘルニア,OPLL,脊柱管狭窄などで素因減額主張されることがありますが、これもなかなか認められない場合もケースバイケースです。

神経症状による後遺障害について

こんにちは!

 

かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です!

 

さて、神経症状による後遺障害についてお話いたします

 

1  神経症状による後遺障害とは?

 

神経症状による後遺障害については、第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」又は第14級9号「局部に神経症状を残すもの」のいずれかとなります。
このうち、14級9号は神経学的検査所見や画像所見などからは証明できないが、受傷時の状況や治療の経過などから、連続性や一貫性が認められ、医学的に説明可能な症状であることが必要とされます。
特に異議申立てするに際しては、新たな検査結果や結果を提出したり主治医に意見を求めたりするなど、後遺障害の内容や程度を明らかにすることが必要です。

 

2 過去のケースでは?

過去のケースでは、依頼者様の主治医に医療照会も行い、意見書を書いてもらい医療面談まで行うことにしました。その結果、異議申立てが認められました。
休業損害については、休業の事実があれば無条件で休業損害の発生が認められるわけではなく、傷害の内容・程度、治療内容、被害者が従事している業務内容等を勘案して相当な期間が休業期間として認定されます。

過去のケースでは、後遺障害14級9号が認定されたとともに、依頼者様が従事している介護施設の職員の仕事内容を効果的に主張したことが良い結果に結びついたのだと思います。
依頼者様より、「野条にしてよかった」「結果に満足している」旨の連絡がきた際には、自分としても有難いお言葉として胸に刻んでいます。
このように粘り強く交渉することにより得られるものもありますので、同じようなケースまたは後遺障害でお悩みの方は弁護士まで一度ご相談されることをお勧めいたします。

 

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